バーチャルガールズデュオ・VESPERBELLが3rdワンマンライブ「BEYOND」を開催 一瞬のなかに込められた強熱の一夜を追った

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2025年6月2日にLIQUIDROOMにて、RK Musicに所属するバーチャルガールズデュオ・VESPERBELL(ヴェスパーベル)が3rdワンマンライブ「BEYOND」を開催した。

メジャーデビューを果たしてから早くも2度目となるワンマンライブになるが、彼女ら2人の活動は少しずつ広まっているようで、平日夜の恵比寿LIQUIDROOMに多くのファンが集まった。

そんな彼女ら2人に先日インタビューを行なったわけだが、そのなかで「これまでのライブを確実に超えちゃうだろうなと正直確信しています」という話をしてくれていた。

そんな言葉を聞いたら、しっかりと彼女らのライブは見るべき。3rdワンマンライブ『BEYOND』へと向かい、彼女らの熱演を見守った。

6月2日月曜という週始めにも関わらず、多くのファンが集まったこの日のライブ。ステージのビジョンにはメタルロゴ仕様となった”BEYOND”の文字がクルクルと回転し、物々しい機械音が小さく会場に響く。19時を迎えて今回のライブをサポートするバンドメンバーがスッと登場すると、暗転していくとともに機械音が大きくなり、ライブへと入り込んでいくことになった。

この日のライブグッズには手首につけれるバングルライトが発売され、少なくない観客がヨミ・カスカ両名のバングルを購入し、手を挙げると青・オレンジの色合いが観客側をキレイに染めていた。

1曲目に歌い始めたのは「RAMPAGE」だ。冒頭からハンドクラップにオイ!オイ!と声を上げて盛り上がる観客たちに、VESPERBELは初っ端からエンジン全開でぶつかっていく。青と黄色のライトアップのなかで歌っていった「inspire」では、ヨミが途中でヘドバンを観客へ求める。

最初は最前エリアのみの少ない人数だったが、それを見た後ろの観客たちが次々にヘドバンしていき、最後はほぼ観客全員が頭を振っている壮観なシーンに。「よくできました」とヨミが一声かけると、喜びの音色に近い歓声が沸き起こる。

3曲目「Hurt」では、サビ終わりにロングトーンとともにメロディがぐんとあがっていく、グリッサンドでハイトーンへと移行していく印象的なボーカルフレーズを、ヨミ・カスカ共々にバッチリときめ、観客から大きな歓声と拍手が巻き起こる。

ヨミとカスカのボーカルのみならず、生バンドによるバンドアンサンブルも序盤から存在感を発揮しており、原曲では抑えめ気味だったVESPERBELLのロック色の強さが、冒頭3曲のパフォーマンスだけでもかなり際立って会場に響いた。

MCパートを挟み、ここからはカバー楽曲を披露していくパートへ。ONE OK ROCKの「完全感覚Dreamer」「キミシダイ列車」の2曲に、MYTH&ROID「VORACITY」とまずは3曲を歌唱する。この3曲は以前VEPSERBELLが歌ってみた動画として投稿したことのある3曲で、このタイミングでの歌唱に会場は大盛り上がり。1曲目に披露した「完全感覚Dreamer」でヨミが「かかってこいよ!リキッド!」と煽り、メタリックなギターサウンドが炸裂。会場は一層ハードな空間へとなだれこんでいく

「VORACITY」を歌い終えたところで、「と!いうことで!今日はここまで!」といきなりボケをかまし、「えーっ!?」と笑いながら返事をする温かな瞬間もあったが、「みんなのほうがバテてない?大丈夫?」というほど、高いボルテージでライブが続いていた。

オールスタンディングライブで体を揺らしながら、時にはハンドクラップやヘドバンまで求められるというと、半ばロックバンドのライブのようなもの。だが、しっかりとついてくるこの日の観客たちも「まだまだこれから楽しもう』というムードであったことも書いておくべきだ。

「未発表のカバーもこれからやります。練習してきましたよ!」とカスカがMCし、直後に披露されたのは「リライト」「Touch off」「怪獣の花唄」という3曲。「リライト」「怪獣の花唄」はイントロの時点で喜びの歓声が起こり、合唱パートではおなじみの合唱。ヨミ・カスカのダブルボーカルもユニゾンで歌う部分とハーモニーで歌う部分との妙味もあり、会場全員を魅了した。

その後も「革命ディアリズム」「天ノ弱」「カルマ」と披露していったが、ギターのひずんだ荒っぽいサウンドがどの楽曲でも前面に出て、ほとばしるような力強さを押し出していく。

「ラストスパートいくぞぉ!」と観客を挑発し、一気に畳みかけていく。「ignition」「或いは虚空に夢を視る」「Bell Ringer」と歌っていき、2人のボーカルもフルパワーでふり絞っていく。

「或いは虚空に夢を視る」がカスカがお気に入りだとインタビューで語っており、「アニソンのオープニング感があって好き」と理由を挙げていたが、この日は生バンドのアンサンブルもあって楽曲が本来持っていたスケールの大きさがよりソリッドな形で表現されており、この日のライブフロアに突き刺さっていた。

左手のヨミ・右手のカスカに合わせて照明が青・赤(オレンジ)に照らされ、会場上部の照明が白に黄色にとキラめくなか、ラストに歌った「Bell Ringer」のアグレッシブなパフォーマンスは壮烈だった。明暗のコントラストが映えた演出と2人の歌声が調和し、この日一番の美しいモーメントとなったのだ。

アンコールの声に応えて登場した2人は、「鳴動」「RISE」の2曲を歌った。メンバー紹介を挟んでスタートした「鳴動」は、メタルのようなザクザクとしたギターリフで終始リードしていく、刹那さや物憂げなメロディやハーモナイズで構築されている「RISE」は爆発力ある1曲へと変身。飛び跳ね、手を挙げ、声を上げ、大盛り上がりの観客とともに見事にこの日のラストを飾ってみせたのだった。

これら17曲の楽曲はバンドアンサンブルの下、ギターサウンドのゴリゴリとした質感で再構築されたVESPERBELサウンドは、終始ライブハウスを攻め立てていった。対するVESPSERBELL2人のボーカルも負けず劣らずのエネルギーを発していた。

目についたのは、このライブに臨む2人の演出だ。ステージ後方に建てられた大型モニターに、ライブハウスにバンド隊が揃ったステージ上だが、モニター画面にはVESPERBELL2人のみが現れ、終始黒い背景のまえで歌うことになった。

セカンドワンマンライブでみせていた無骨で重厚なマシーンや、宇宙空間を飛び交うような飛行船といったイメージ映像などはナシ。VESPERBELLはその身一つ・その声一つでバンド隊とぶつかり、ライブハウスをぶち上げたのだった。

そのパワフルさと衝撃度はまるで地球をかち割ってしまうかのよう……といえばさすがに大袈裟すぎるが、実はこの日披露された17曲が約1時間20分ほどという超速で歌われたと知れば、その受け取り方も変わるだろう。

高濃度・高密な爆裂なパフォーマンスが矢継ぎ早にブチこまれた結果、2人がステージから捌けてアンコールが終わっても、観客たちがさらなるアンコールを求めて「もう1回!もう1回!もう1回!」とダブルアンコールを声を上げたのも納得だ。

ステージ横からヨミとカスカが「ありがとう!」と感謝の声をあげて観客のダブルアンコールの声にこたえていたが、しびれを切らしたヨミから「みんな!はよ帰れ!」と一声で会場は大笑い。オチがついたとばかりに会場が明るくなり、公演はようやく終幕にいたったのだ。

客電がつき、帰りの途につこうとする観客たちの中には、この日の熱演がいかにヤバかったかを語り合う者もいれば、海外からの観客はステージのバックで記念撮影をしていた。ピースフルなワンシーンでありながら、今後この熱演の輪はどこまで広がっていくのだろうか?そんなことを考えてしまった。

セットリスト
RAMPAGE
inspire
Hurt
完全感覚Dreamer(cover)
キミシダイ列車(cover)
VORACITY(cover)
リライト(cover)
Touch off(cover)
怪獣の花唄(cover)
革命デュアリズム(cover)
天ノ弱(cover)
カルマ(cover)
ignition
或いは虚空に夢を視る
Bell Ringer

アンコール
鳴動
RISE

(TEXT by 草野虹 All Photo By sotaro goto